聴覚障害者の方とのコミュニケーションは、今まではノートでの筆談が中心でした。
ただ、診査診断の際、イスひとつ起こすのにもノートに書いて見せて、という作業がありましたし、治療の時は、院長や衛生士の間からノートを患者様に見せなければなりませんので、治療の妨げになりはしないかと気になりました。
患者様も、見るのが大変そうでした。
そこで院長が、以前から持っていたアイトレックをパソコンにつないで、スクリーンに文字を出す「パソコン要約筆記」ができないか、とおっしゃったのです。
最初このシステムを見た時には、「本当にできるのかなあ」と半信半疑でしたが、実際にやってみてびっくりです。
私も少しメガネ(アイトレック)をかけてみましたが、まるで映画のスクリーンを見ているようです。
そこに文字が出てくるのですから・・・。

パソコン要約筆記の入力作業を担当した感想としましては、初めはとても緊張しました。
治療の場面で使いますので、入力ミスなど院長の言葉を正確にお伝えできないと意味がありませんので。(といいながら、ミスタッチばかりでしたが)
ですが、とても和やかな雰囲気でしたので、すぐに楽しくなりました。
このアイトレックを使ったパソコン要約筆記のメリットのひとつは、院長の指示した言葉だけでなく、入力者の言葉も伝えられるところだと思います。
すなわち、『口を開けて下さい』とか『イスを倒します』などの、何かの動作の前にかける言葉だけはでなく、治療中であっても普通のお声がけができるということです。
例えば、ほんの10分位の待ち時間でも、患者様にしたら何も聞こえない、という状況ではとても不安になります。
今日は待ち時間中、ふと患者様の方を見ると、出てくる文字を見落とすまいと必死に目を見開いておられましたので、「こういったメガネをかけた治療ははじめてですか?」と入力すると、「ウンウン」とうなずかれました。
そこで、「私も今日が初めてなので、とても緊張しました。ミスタッチばかりで読みづらかったですね、申し訳ございませんでした」と入力すると、「いいよいいよ」と言うふうに、笑いながらOKサインを向けて下さいました。
ささいな事ですが、少し心が通じ合ったようで、嬉しかったです。
聴覚障害の方は、どうしてもコミュニケーションがとりにくくなります。
必要最低限のことを伝えるだけで精一杯になってしまうからです。
手話を勉強している友人から、手話のボギャブラリーが少なくて、コミュニケーションが取りたくても取れないという話も聞きました。
うちは手話ができる人がいないので、ノートでの会話が中心でしたが、治療中にわざわざ院長やスタッフが手を止めて、ノートにお声がけを書いて見せる訳にはいきませんしね。(笑)
このようなパソコン要約筆記を用いて、治療の手を止めることなく、お声がけをして患者様の緊張をやわらげることができるというのは、素晴らしいことだと思います。
治療もスムーズに進みますし、信頼関係もより強まると思います。
このシステムが広まることによって、歯のことで困っているが歯科医院へ行けない・・・という聴覚障害者の人が少しでも減ればいいなあ、そういった人の役に立ちたいなあと思いました。